塩鮭でスウェーデンの伝統料理ラックスプディング

以前からずっとこのサイトで作ってみたいと思っていた料理があります。スウェーデンのサーモンとじゃが芋のオーブン焼き、ラックスプディング(laxpudding)です。

ただ、なかなか作る機会がありませんでした。理由は単純で、材料のスモークサーモンが高いから。レシピを見ると4人分で300〜400gほど使うものが多く、気軽に挑戦できる量ではありません。

実際、私がこれまでに作ったのは一度だけ。イギリス旅行のお土産にスモークサーモンをたっぷりいただいたときでした。おいしかった記憶はあるものの、それ以来すっかりご無沙汰です。

そんなある日、1974年発行のスウェーデンの料理本を眺めていたところ、ラックスプディングのレシピに目が留まりました。

材料を見ると「salt laxöring(塩漬けサーモン)」を使い、しかも10〜12時間、水を何度か替えながら塩抜きすると書かれています。

えー!10〜12時間!半日ではないか!

つまり、かなり塩辛い鮭ということです。日本でいえば新巻鮭のようなものだったのでしょうか。

ラックスプディングについて更に調べてみると、もともとは塩漬けの鮭で作られていたものの、そうした鮭が手に入りにくくなったため、現在ではスモークサーモンやグラブラックス、生鮭などを組み合わせて作るレシピが一般的になったそうです。

思えば私が子どもの頃、「塩鮭」といえばしっかり塩の効いた塩辛いものでしたが、いつの間にか甘塩が主流になっています。これは冷蔵庫の普及や流通の発達が大きいのでしょう。

もしかしたら冷蔵庫のない暮らしというと、戦前や戦後の話のように聞こえるかもしれません。1980年代の中学生時代に先生が「教師を始めた頃は冷蔵庫のない家があったので、話題に出せなかった」と話していたのを覚えています。

そういえば、幼いころ我が家に通っていたお手伝いさんに、母がそれまで使っていた冷蔵庫を「おばちゃんの家にはないから」と譲ったのを覚えています。驚いて「どうやっているの?」と尋ねると、「じょうちゃま、ご飯には酢を混ぜて床下に入れているんですよ」と教えてくれました。この本が書かれたのと同じ1970年代の日本では冷蔵庫がほとんどの家庭に普及していましたが、それでも冷蔵庫が無い家庭が実際に身近にあったという思い出です。

閑話休題。

ラックスプディングはもともと塩漬けの鮭を使っていたなら、日本の塩鮭で作ってもいいんじゃないの?むしろオリジナルに近いんじゃないの?と気が付きました。

そこで思い出したのが、先日、友人の知り合いのイベントスペースで開催した北欧料理教室のことです。クイックシナモンロールとロヒケイット(フィンランドのサーモンスープ)を作ったのですが、会場が遠方だったため、材料の調達は友人にお願いしていました。

その友人の家の近くには「ロピア」があり、オリジナル商品の「アタカマソルトサーモン」が安くておすすめだというので、試しに使ってみることにしました。

これがなかなか良かったのです。

100g230円はかなりリーズナブルです!

塩鮭とはいっても塩分は約1.5%。昔ながらの塩辛い鮭を想像すると拍子抜けするほど穏やかな塩味で、むしろその控えめな塩気がスープにちょうどよい旨みを加えてくれました。しかも骨なしなので扱いやすい。

それなら、アタカマソルトサーモンでラックスプディングも作ってみよう。価格も手頃で気軽に試せるし。

そこで、あらためて1970年代のレシピ本と現代のレシピを見比べてみると、鮭に対するじゃが芋の割合が、1970年代のレシピの方が多いことに気が付きました。

以前、1950年代の日本のレシピを再現した記事を読んだことがあり、その中に「当時のおかずは現代の感覚からするとかなり味が濃い。それは少しのおかずでたくさんのご飯を食べるためだった」という説明があり、なるほどと思った記憶があります。

もしかすると、スウェーデンでも事情は似ていたのかもしれません。高価な肉や魚は少なめにし濃い味付けにして、たっぷりのじゃが芋と組み合わせて量を増やしていたのではないでしょうか。

もうひとつ気が付いたのがプディング液。1970年代のレシピでは牛乳と卵だけ。ところが現代のレシピを見ると、ほとんどが牛乳に生クリームを加えています。現代のレシピは、より濃厚でリッチな味わいを求める傾向があるのかもしれません。

ただ、手持ちの1976年と1968年の本のどちらにもラックスプディングがないので、この本一つで判断できるものではないのはおことわりしておきますね。

と、前置きの考察部分が随分と長くなってしまいましたが、調理自体は簡単なのでぜひお試しください。なお、こちらは現地オリジナルの4人分を半分にした2人用のレシピになっています。人数に合わせて調整してください。私たちにとっては「2人でもちょっと多かったかな」という感じでしたので、大人の方や他におかずを作られる場合なら3人、もしかしたら4人でも大丈夫かも知れません。

この写真は1/3に切り分けたもの

それでは、レシピです。なお、今回は塩鮭を使うというアイデアだけをいただいて、他の部分は現代のレシピに寄せることにしました。

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塩鮭でラックスプディング

分量 2 ~4人分

用意するもの

  • 1リットルくらい入る耐熱容器

材料

  • じゃが芋 500g 煮崩れにくい品種
  • 塩鮭 200g 骨のないもの
  • ディル 1パック
  • 卵 2個
  • 生クリーム 100ml
  • 牛乳 100ml
  • 塩 小さじ½
  • こしょう 少々
  • バターまたはマーガリン 適量

仕上げ

  • バター 25g
  • レモン 適量

作り方

  • 鍋に水、塩(分量外)、じゃが芋をいれ、沸騰したら火を弱めて固めに茹でて冷ます。時間があれば前日に茹で、冷蔵庫でしっかり冷やしておくと切りやすく崩れにくい。
  • 塩鮭は皮を取り除き、薄切りにする。そぎ切りにしながら皮から身を外すとやりやすい。
  • ディルを飾り用に少し取り分け、残りは荒いみじん切りにする。
  • じゃが芋の皮をむき、5mm厚さの輪切りにする。
  • ボウルに卵を溶きほぐし、生クリーム、牛乳、塩、こしょうを加えて混ぜる。
  • 耐熱容器にバターまたはマーガリンを塗る。
  • じゃが芋の1/3量を敷き、軽く塩・こしょう(分量外)をふる。その上に塩鮭の半量、ディルの半量をのせる。
  • 再びじゃが芋の1/3量を敷き、軽く塩・こしょう(分量外)をふる。残りの塩鮭とディルをのせる。残りのじゃが芋を重ね、⑤の卵液を注ぐ。
  • 表面に少量のサラダ油または溶かしバターかマーガリン(分量外)をかける。
  • 200℃に予熱したオーブンで約45分焼く。
  • 小鍋にバター25gを入れて熱し、薄いきつね色になったら火を止め、焦がしバターを作る。
  • ラックスプディングを少し冷ましてから切り分け、焦がしバターをかけ、レモンのくし切りを添える。ディルを飾る。

動画

ヒント

1974年のレシピでは表面にサラダ油をかけて焼いています。今回はレシピを再現するためサラダ油を使用しましたが、現代風に溶かしバターでも良いです。
牛乳だけでも作れます。
炒めた玉ねぎを間に挟んでも良いです。
煮崩れにくいじゃが芋は、メイクイーン、黄爵(トウヤ)、西豊(ニシユタカ)などです。

グリーンサラダを添えてどうぞ。ラックスプディングが生クリームやバターを使ったレシピなので、この日はりんごを使って甘みと酸味のあるさっぱりとしたサラダにしました。

塩鮭の新しい使い方にいかがでしょうか?もし鮭と生クリームが余ったら、次はロヒケイットを作ってみてはいかがでしょう。塩気を出すために、鮭を入れてから数分煮込んでください。個人的には生鮭で作るおいしかったでです。

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