10年程前でしょうか、友人でノルウェー語講師の青木さんにノルウェー料理といえば何があるのか尋ねたところ「バカラオ」と返ってきたので「バカラオってスペイン料理でしょう?」「そうなんだけど~ノルウェーの料理なの~」とふわ~と答えられました。今一つ分からなかったのですが、当時(今も)料理に関しては全く信用していないので「ふーん」と追及もせずにそのままに。
特にきっかけもないのですが、さすがに北欧に関わる仕事をしているとノルウェーにはバカラオという料理があるのだとぼんやりと分かってきました。
バカラオ、とはスペイン語で干し鱈のことです。ノルウェーの基幹産業は漁業で、特に鱈は最古の文献で875年に記録が残されているほど歴史ある重要な資源。長期保存のために塩漬けし干した鱈は14世紀から作られているとか。これに目を付けたのが大航海時代(16-17世紀)のスペインとポルトガル。こうして干し鱈は南欧に広がり、スペインはもちろん、ポルトガル(ポルトガル語ではバカリャウ)には365のレシピがあると言われるほどです。ポルトガルのバカリャウ(バカラオ)好きにはノルウェー人もビックリ。嘘じゃない。NHKの『世界入りにい居酒屋』ポルトガル編でノルウェーの鱈会社の営業の人が驚いていた。
さて、そのバカラオ(干し鱈)料理が逆輸入の形でノルウェーに入って来たのが、ノルウェー料理バカラオ。素材名がそのまま料理名になったわけです。例えるなら日本におけるサルサかな…サルサとはスペイン語でソースの意味なのですが、日本ではタコスにつける辛いソースをサルサと言いますよね(あんまり良い例ではないか)。ちなみに料理ではなく、ノルウェー語で干し鱈はKlippfiskです。
そういう経緯があり、バカラオにはノルウェーでは生息しないトマト、オリーブ、ニンニクといった南欧の素材が使われます。昔々のノルウェーの人にはエキゾチックなおしゃれ料理だったのかもね。
さて、北欧輸入食材のアクアビットジャパンさんが扱い始めたという干し鱈を手に入れたので、気になっていたバカラオを作ることにしました。現地のレシピを探すと、鱈とジャガイモと玉ねぎをトマト味で煮込むというのはどこも同じなのですが、とても長い歴史を持つ料理なのでそれぞれが少しずつ違う。迷って、入門として一番材料が少なく、調理法が一番簡単な方法を選びました。
それでは、作り方です。ちなみに6人分を3分の1にしたのですが、それでも量が多かった!もしかしたら4人でも大丈夫かもしれません。
(追記)夕食に出したらちょっと苦しかったけれど二人で食べきりました。
バカラオ(ノルウェーの干し鱈トマト煮込み)
用意するもの
- 厚手の煮込み鍋
材料
- 干し鱈(バカラオ/バカリャウ) 300~350g
- 玉ねぎ 300g
- じゃが芋 300g メークインなど煮崩れない品種
- 唐辛子(鷹の爪) 1~2本
- ニンニク 1片
- トマト缶 1缶
- ベイリーフ 1枚
- ブラックオリーブ(種なし) 10個
- オリーブオイル 100㏄
- パセリ 適量
作り方
- 干し鱈は表面の塩を洗い流し、24時間水に漬けて塩抜きをする。途中で1回水を交換する。(前日にやっておくこと)
- 鱈の皮と骨を取り2~3cmくらいの大きさに切る。
- 玉ねぎとじゃが芋の皮を剥き、7mmくらいの厚さに切る。ニンニクは粗みじん切りにする。
- トマト缶は中身を出して手でつぶす。カットトマトならそのままで使う。
- 厚手の鍋の底にトマトを少し広げ、その上にジャガイモ、玉ねぎ、鱈を層にして重ねる。
- 残りのトマト缶の中身を入れ、表面を覆う。ニンニク、オリーブ、ベイリーフ、唐辛子を乗せ、オリーブオイルを回しかける。
- 火をつけてくつくつと煮立ってきたら弱火にして蓋をし45分~1時間煮る。この間時々蓋を取って鍋を揺らすが、かき混ぜないこと。
- 味を見て塩コショウ(おそらく塩は不要)する。器に盛り、パセリのみじん切りを振る。
動画
ヒント
コンソメを入れなくても鱈から出る旨味で十分美味しい!身が柔らかい鱈ですが、干すことによって繊維がしっかりとして噛み応えある食感に変わります。
今回はアクアビットジャパンさんのバカリャウを使いました。バカラオで探すと数は少ないのですが、アクアビットさん以外にも取り扱っている輸入業者はあるようです。
バカラオは水で戻すと35%くらい増えるそうです。もし生の塩鱈で作るならば分量の目安にしてください。生の塩鱈なら途中から加えた方がいいかな?あと、コンソメを入れた方がいいかも?塩鱈で作ったことないので分かりませんが…。
寒さが本格的なこの季節、是非味わってほしいノルウェー料理です。
残ったバカラオはコロッケやグラタンにどうぞ!