キリスト教の習わしではイースター(復活祭)前の40日間、宗教用語でいうところの四旬節には断食(粗末な食事のみ)をするため、四旬節が始まる前日の火曜日にカロリーの高いものを食べる習慣が生まれました。英語で「Fat Tuesday(脂肪の火曜日)」。やだストレートすぎる。
国によってカロリーの高いものは異なり、スウェーデンではバターたっぷりの甘いパンに生クリームとアーモンドクリームを挟んだ「Semla(セムラ)」と呼ばれるお菓子を食べます。ちなみにスウェーデン語でも「Fettisdagen(脂肪の火曜日)」。バター、砂糖、生クリーム、アーモンド……怖いですね。イギリスでは単にパンケーキを食べるのに対して、スウェーデンのファットぶりが想像を超えてる。
セムラは怖いけれど美味しい。近年スウェーデンでは、通常のセムラでは飽き足らず、様々なアレンジセムラが生まれています。その中で一番ポピュラーなのはチョコレート味のセムラ、chokladsemla(チョクラッドセムラ)これは私がスウェーデンで食べたチョコレートセムラ。

パン生地をチョコレートでコーティングしてチョコレートクリームと生クリームを挟んでチョコチップとパールシュガー(?)をトッピング。実は衝撃的に甘くて食べるのが辛かった…甘いものは少しなら美味しいのですが、スウェーデンサイズって結構大きいのですよね。
今年もセムラは作ろうかなと考えをめぐらしていて、ふとバレンタインも近いし、チョコレートセムラを作ってみようと思いつきました。アレンジセムラは伝統的なセムラと違って自由な発想で作れるため、スウェーデンでは作り手ごとに工夫があります。それなら自分好みで作ってみようと様々なチョコレートセムラのレシピを見比べました。
いくつもあるチョコレートセムラのレシピから、ココア生地にチョコレートクリームを使った一つをベースにすることに。他のレシピも参照して、日本の人にも食べやすい甘さ控えめのアイデアを練りました。ココア入りのパンを作るのに苦戦しましたが試作3回目にして完成。

更に量は少な目、サイズも小さめにしたので、日本の家庭でも作りやすいでしょう。甘すぎず大人の方に楽しんでもらえる味になったと思います。そんな大人のチョコレートセムラのレシピです。

チョコレートセムラ
材料
パン
- 牛乳 100㏄
- インスタントドライイースト 3g
- 純ココアパウダー 大さじ1.5
- 砂糖 25g
- 塩 一つまみ
- 卵液 20g
- カルダモンパウダー 小さじ½ 無くても良い
- ベーキングパウダー 小さじ¼
- 強力粉 100g
- 薄力粉 50g
- バター(マーガリン) 30g 室温で柔らかくしておく
フィリング
- アーモンドプードル 60g
- ダークチョコレート 13g
- 牛乳 大さじ2 様子を見ながら加減
- 砂糖 小さじ1~ 好みで増やす
チョコレートクリーム
- 生クリーム (脂肪分35%) 100㏄
- ダークチョコレート 25g
- 砂糖 大さじ½
仕上げ
- 粉砂糖 適量
作り方
チョコレートクリームを準備する
- チョコレートを包丁で細かく切り、ボウルに入れる。
- 生クリームと砂糖を小鍋に入れ、砂糖が溶けるまで温める。沸騰させないこと。
- チョコレートに温めた生クリームを注ぎ、泡立てでかき混ぜてチョコレートを溶かす。冷蔵庫で冷ましておく。(ここまでを前日にしても良い)
パンを作る
- 牛乳を40℃くらいに温める。(電子レンジを使ってもいいです。)
- ボウルに温めた牛乳を入れ、イーストを加え泡立てでかき混ぜる。
- 砂糖、塩、卵液、カルダモンパウダー、ベーキングパウダー、ココアパウダーを加え更にかき混ぜる。
- 薄力粉と強力粉を3回くらいに分けて泡立てでかき混ぜ、泡立てが重くなったら手に替えて捏ね合わせる。ある程度混ざったらバター(マーガリン)を加えて捏ねる。大体混ざったら、台の上に生地をあけて、15分くらいしっかりと捏ねる。
- ボウルに入れてラップなどで覆い、温かい場所、あるいはオーブンの発酵で60分、あるいは1.5~2倍になるまで発酵させる。
- 生地を台に取り出し、30秒ほど軽く捏ねて、6等分して丸める。(1個54gくらい)
- 天板に丸めた生地を乗せて乾いたクロスをかぶせて、温かい場所、あるいはオーブンの発酵で30分くらい発酵させる。
- 1.5倍くらいに膨らんだら、表面に生地に使った残りの卵液を塗る。200℃に予熱したオーブンで10分焼く。焼きあがったらラックなどに乗せ、乾いたクロスをかぶせて冷ましておく。
フィリングを作って詰める
- チョコレートを5mm角くらいに切る。牛乳は電子レンジで温める。
- パンの上⅓くらいの部分を切り取り、中身を指で取り出して窪みを作る。深く取りすぎて突き抜けないように。
- パンの中身とアーモンドプードル、小さく切ったチョコレートを混ぜる。牛乳を少しずつ加え餡子くらいの硬さにする。硬さはパンの分量に左右されるので牛乳は一気に入れないこと。味見をして好みの甘さまで砂糖を加える。
- パンの穴にフィリングを詰める。
チョコレートクリームを乗せて仕上げる
- 冷えたチョコレートクリームを泡立ててアーモンドクリームを詰めたパンの上に絞り袋で絞り出す。スプーンで乗せても良い。切り取った蓋を戻す。
- 茶漉しに粉砂糖を入れて振りかけて飾る。粉砂糖にココアパウダーを混ぜても良い。
動画
ヒント
フィリングに入れたチョコレートのポリポリとした食感がアクセントになっています。甘さはかなり控えめですので、もっと甘い方がお好みでしたらフィリングの砂糖を増やしてください。

今年(2022年)のファットチューズデーは3月1日です。ファットチューズデーに作っていただけると嬉しいです。少し手間がかかりますが、完成したときの喜びは大きい!チョコレートなのでバレンタインにもどうぞ。

