北欧料理を作るようになったきっかけのほとんどが好奇心。「食べたい」というより「作り方を知りたい」という探求心の方が強い感じ。そこら辺の話は「私について」でも触れていますので、お時間あれば読んでみて下さい。
今回フィンランド旅行中に参加した料理教室で出会った「ちょっとした驚き」が、探究心をくすぐることになりました。
フィンランドで参加した料理教室は、旅行者向けのレッスン。サーモンスープ(lohikeitto)、ミートボール(lihapullat)、そしてシナモンロール(korvapuusti)を作るという盛りだくさんの内容。どれも美味しかったのですが、私の心に火をつけたのは、ミートボール!
ミートボールといえばスウェーデンが連想されるのですが、フィンランドにもミートボール文化があります。レシピは基本的にスウェーデンと同じなのですが、参加したレッスンでは肉だねに発酵乳製品のケルマヴィーリ(kermaviili)を混ぜ込むという、ちょっとユニークなレシピ。なるほど、これはいかにもフィンランド。

そしてもう一つ、レシピの中で特に面白かったのが、「今回は炒めた玉ねぎを入れますが、オニオンスープの素を使ってもOK」という説明。
……え? ミートボールに、オニオンスープの素?
俄然、興味が湧いてきました。レッスン後すぐに調べてみると、フィンランドのKスーパー製品やクノールのオニオンスープサイトに「ミートボールの味付けにも」と書いてあるではないですか!結構普通にミートボールに使われてるんだなあと、妙に感心。
むくむくと作ってみたいと気持ちが盛り上がったので、帰国の当日に立ち寄ったスーパーでオニオンスープの素を手に取ったのですが、量がとても多かったので、悩んでいるうちに長旅の疲れで何も考えられなくなり、買うのをやめてしまいました。
その時は「でも大丈夫、日本でもオニオンスープの素は手に入るし……」と思っていたのですが、思わぬ落とし穴がありました。

スープの素、塩分が違う問題
帰国後早速レシピを確認。レシピではオニオンスープの素1パックとしか書いていません。サイトで確認すると、フィンランドのオニオンスープの素の1パックは57gで1リットル分とあります。手元にある淡路島で買ったオニオンスープの素は一人分6.2gに小分けされ、200ml分とあるので、1リットル分にするなら31g……あれ?
そこで成分量を確認してみると、フィンランドのオニオンスープの塩分量は100g当たり16.6 g(16.6%)。製品57g中には9.462gの計算になります。一方、私が買った淡路島製のオニオンスープの素の塩分は6.2g当たり1.8g(29%)……やばいやばい、グラム数だけ見てフィンランドのレシピと同じ量を使っていたら食べられないくらいしょっぱい物を作ってしまうところだった!
試しに日本とフィンランドだけでなく、日本の各メーカーを調べると、グラム当たりの塩分量がバラバラ。使うお湯の量も200mlだけでなく150mlの場合もある。これは困った。
「じゃあ、塩分16.6%になるように製品ごとに重量を調整すれば?」とも思いましたが、そもそも塩分量が表示されてない製品も多いし、計算も面倒。
そんな中、私は一つの共通点に気付きました。
<フィンランドのオニオンスープ>
1袋57gに塩分9.462g→1Lのお湯 → 完成の塩分約0.89%
<日本のオニオンスープ>
1袋6.2gに塩分1.8g→ 200mlのお湯 →完成の塩分約0.87%
驚いて、他のメーカーのオニオンスープの素も比較してみると……
どの製品も、お湯で溶かした時の塩分濃度が「約0.8%」になるように作られている!
0.8%というのは、実は人間が「美味しい」と感じる最適な塩分濃度。つまり、「何グラムのスープの素を使うか」ではなく、「そのスープを何ml分作るか」を基準にすれば、塩加減が自動的に整うということ!
これはもう、大発見!自分天才か!(いや、気がつくのが遅すぎ?)
味の決め手は、塩分ではなく「総量」で考える!
ということで、私のミートボールレシピでは「オニオンスープ800ml分を用意してください」としています。日本のスープの素を使うなら、200ml用タイプなら4袋分、150mlタイプなら5袋分が目安。
もちろん、細かい調整はお好みでOK。でも、塩分濃度の「黄金比=0.8% 」を頭の片隅に置いておくと味付けのヒントになります。

ちなみに今回のレシピは、フィンランドで教わった方法と、フィンランドの他のレシピを比べながら、日本で手に入る材料の置き換えや、作りやすい分量へと私のアレンジを加えたもの。レッスンで教わったままを完全再現したわけではありません。
もしレッスンのレシピをそのまま知りたければ、ぜひフィンランドの料理教室に行ってみてください。日本では手に入らない隠し味もあり、異文化体験としてもおすすめです!
それではレシピです。作りやすいようにフィンランドの量よりも減らし、オリジナルのケルマヴィーリの代用にギリシャヨーグルトを使っています。ヨーグルトには肉を柔らかくする作用があると聞きましたが、そういう効果も狙っているのかな?
また付け合わせには、以前作った紫玉ねぎの甘酢漬けと、茹でじゃが芋のディルバター和えを添えました。

フィンランド流ミートボール
材料
- 合い挽き肉 500g
- オニオンスープの素 800ml分 ※下記ヒント参照
- パン粉 大さじ3
- こしょう 少々
- ギリシャヨーグルト 150g ケルマヴィーリの代用
- 卵 1個
作り方
- 材料を全て良く混ぜて直径3cmくらいに丸める(約30個)
- フライパンにサラダ油(分量外)を熱し、ミートボールを2~3回に分けていれる。
- 弱めの中火で動かさずに4分焼き、ひっくり返して3分。さらにコロコロ転がして全体を焼く(焦げやすいので火加減に注意する)。
- 焼き上がったら皿に盛り、茹でじゃが芋またはマッシュポテト、ビーツまたはきゅうりの甘酢漬け、好みでリンゴンベリージャムを添える。
ヒント
(例:1袋200mlなら4袋/150mlなら5袋) 焦げやすいので、バターは使わない方が良い。弱火過ぎると火が通らないが、4分焼いて焦げるようなら火が強すぎるので弱める。最初に数個焼いて丁度いい火加減を探ってみても良い。 フライパンで焼く代わりに、オーブン180℃で15分焼く方法もOK。 スウェーデンと違って、フィンランドではリンゴンベリージャムは必須ではない。
料理教室では、私以外は3人のアメリカ人が参加していました。レッスンの最初には、自己紹介と「なぜ参加したか」の理由を話す時間が。普段あまり自分語りをしない典型的な日本人の私は、あたふたしながら怪しい動機をつっかえつっかえ話す羽目に……。これから参加する方は、自己紹介をあらかじめ用意しておくと安心です!
そして私は、ミートボールを焼く係に。「お箸を使う?」と先生に聞かれて「はい、それでは」と答えたら、出てきたのは普通の食事用の金属箸。えっ、菜箸じゃないの? しかも熱伝導抜群の金属!返すわけにもいかず、私は「あちち! あちち!」と心の中で叫びながら必死でミートボールをひっくり返したのでした。
フィンランド料理教室は下記のAirbnbのサイトからお申込みできます。
伝統的なフィンランド料理をつくろう
オニオンスープをあのときスーパーで買って帰ればよかったな、と思った瞬間もあったけれど、買わなかったお陰で塩分量のルールに気が付けて良かったです。もし、フィンランドで買ったオニオンスープの素で作って、そのレシピをアップしていたら、大変にしょっぱいレシピを皆さんに伝えることになったかも、と思うと恐怖に震える。
オニオンスープと言えば、もう15年くらい前だったか、東京で参加したイギリス料理教室でやはりオニオンスープの素を味付けに使うオーブン料理を教わりました。美味しかったので自宅で作ろうとしたのですが、どうしてもオニオンスープの素が見つからない!仕方なくコンソメと炒めたまねぎで代用したことがありました。
ところが、ここ兵庫県に引っ越したところ、どこでもオニオンスープの素が手に入るではないですか!いずれもパッケージに踊る文字は「淡路島」。そう、兵庫県の淡路島の特産は玉ねぎ。今回も淡路島のオニオンスープの素を使いました。ありがとう淡路島!


