20年くらい前のことだったか。夜中につけっ放しにしていたテレビで、外国人観光客に日本の家庭料理を作らせる番組をやっていました。街で(表参道だったかな)で声をかけられた観光客は、料理に必要なものが一式揃ったキッチンに通され、完成した料理の写真を見ながら想像で作る、といった内容です。
もちろん彼ら、彼女らは見たことも食べたことも無いので、全く違う料理になってしまうのですが、どの国の人が作っても進行のタレントが「違うけれど美味しい…!」と褒めるのが肉じゃが。聞くと「肉とじゃが芋と玉ねぎと人参を煮込んだ料理は自分の国にもあるから」と答えていて、なるほど確かにどの国にもあるもんなあと腑に落ちました。
それならばこれはスウェーデン版の肉じゃがかも。牛肉、じゃが芋、玉ねぎをビールで煮込んだ『Sjömansbiff』です。sjömanは船乗り、biffはスライスした肉のこと。船乗りが船の上で作ったのが始まりとされていて、1903年には料理名が記録にある、100年以上も作られている料理です。

Sjömansbiffをシチューと訳していいのか分からないのですが、手持ちの本には英語で『Sailor’s beef stew』とあったのでそれに準じました。セイラーって日本語訳の意味が多すぎて困ったのですが、ポパイ ザ セーラーマン♪ はWikipediaで職業船乗りになっているから船乗りにしちゃいました。
さてさて、調理法には理由があり、まずビールで煮込むのは船上では真水が貴重だからで、それからフライパン一つなのは限られた道具で作るためだそう。もしかして真水の代わりに海水も使っていたのかなあと想像しています。海水なら塩分があるので味付けはバッチリ。あくまでも想像だけど。
それでは調理方法をどうぞ。

スウェーデンの船乗りシチュー
用意するもの
- 蓋のできるフライパン
材料
- 牛肉 厚めのスライス 500g 塊肉を3、4mm厚さにスライスしても良い。
- じゃが芋 600g 煮崩れない種類
- 玉ねぎ 2個
- ビール 330cc
- 水 200cc + コンソメ 1個 溶かしておく
- バター 適量
- ローリエ 1枚
- タイム 適量 お好みで
- バター 適量
- ピクルス 適量 付け合わせ
- パセリ 適量
作り方
- 玉ねぎは薄切りにする。じゃが芋は皮をむいて1cmくらいの厚さに切る。
- 厚手のフライパンにバターを溶かし、牛肉を広げ塩コショウして、両面に焼き目を付けて取り出しておく。後で煮込むので中まで火が通っていなくても良い。量が多いので、3回くらいに分けて焼いては取り出す。
- 肉を取り出したフライパンに薄切りにした玉ねぎを入れて色づくまで炒める。必要なら油を追加する。いったん取り出しておく。
- フライパンにバターを溶かし、じゃが芋の半分を敷き、塩コショウする。玉ねぎの半量をその上に広げ、塩コショウする。牛肉をその上に広げる。残りの玉ねぎを広げ、塩コショウする。最後に残りのじゃが芋を広げ、塩コショウする。
- ビールとコンソメを溶かした水を注ぎ、ローリエとタイムを乗せて蓋をする。弱火でコトコトと1時間煮込む。途中で混ぜたり動かしたりしない。
- 煮込み終わったら味を見て、足りなかったら塩コショウで味を調える。フライパンごと食卓に出す。
- みじん切りにしたパセリを散らし、スライスしたピクルスを添え、パンと一緒に食べる。
動画
ヒント
いわゆるビーフシチューとは違い、とろみのない水分多めの出来上がりで、むしろ肉じゃがに近い感じです。

ピクルスの代わりに酢漬けのビーツでもいいです。休日のブランチに海を見ながらビール片手に食べるイメージ。うちからは海は見えないし、私はお酒が飲めないのですが。

ほったらかし料理なので、キャンプにもいいかも。アウトドアにスウェーデン料理なんてしゃれてる、かな。


煮込みは時間がかかりますが、ほったらかしにでき、長時間台所に立たなくていいので、案外夏向き。