スウェーデンのスーパーマーケットに行くと、虹とトナカイのシルエットを組み合わせたロゴの付いたパッケージに入った平たいパン「Polarbröd」を見たことがあるのではないでしょうか。
Polarbröd(英語ならポーラブレッド)はスウェーデンの最北端、ノルウェーとフィンランドにも接しているノールボッテン県にある街、エルブスビュンで1897年に創業された家族経営の製パン業者です。
よくある街のパン屋が転機を迎えたのが1950年代。創業者ヨハン・ニルソンの孫の妻であるグレタが毎日焼きたてのパンを必要な数用意するにはどうすればいいのか工夫した結果、世界初の冷凍パンが生まれました。それが今に知られるポーラブレッドの始まりです。そのアイデアをきっかけに事業は拡大。1972年に「Polarbröd」の名で会社を設立し、その後も成長し続け、5代目になった今ではスウェーデンで3番目に大きな製パン業となり年間10億クローネを上回る売り上げだとか。
ところが順調だったポーラブレッドに悲劇が訪れたのは、ちょうど1年前の2020年8月23日。夜中に火災が発生し、工場は全焼しました。幸い死傷者はなかったものの、翌日の24日に発表会を予定していた新しい工場ラインも失われてしまいました。
これは火事から1年を迎えたことを告げるポーラブレッド社のインスタグラムです(スワイプすると火事の写真が出てきます)。
この火事で生産ラインは止まり、この1年間ポーラブレッドは生産できない状態にあります。コロナのパンデミックに加え、災害の痛手は泣き面に蜂。現在ポーラブレッド社は数億クローネかけて再建に取り組み、あと数か月、秋になったら生産が始まるとのこと。
その間ポーラブレッド社は主流製品のポーラカーカを販売する代わりに、家庭で作るためのミックス粉を新たに開発し販売しています。そのミックス粉を使った実演動画がこちら。作っているのはお孫さん(7代目?)かな?
日本ではミックス粉は手に入らないので、ミックス粉の成分表示とスウェーデンのフラットブレッドのレシピを参考に作ってみました。ミックス粉の成分表示には「小麦粉、ライ麦粉、砂糖、塩、オーツ麦繊維、大麦麦芽粉、鹿角塩、エンザイム」とあり、これにイースト、植物油、水を混ぜて作ります。面白いのは膨張剤の鹿角塩が使われているところ。 鹿角塩は入手困難なのでベーキングパウダーで代用。その他の手に入りにくい材料は思い切ってカット。分量は作りやすいように3分の1程度に減らしました。
最初強力粉だけで作ったところ、生地の戻りが強くて思ったような平たいパンにならなかったので、薄力粉も混ぜました。
材料や手順を変えながら3回作ってみて、ポーラブレッドと全く同じではないけれど、美味しいポーラカーカ風のブロッドカーカ(フラットブレッド)が出来ました。
ブロッドカーカ
材料
- 水 200cc
- 植物油 大さじ1
- ドライイースト 6g
- 砂糖 20g
- 塩 小さじ½
- ライ麦粉(粗挽き~中挽き) 50g
- 薄力粉 120g
- 強力粉 130g
- ベーキングパウダー 小さじ1
作り方
- オーブンに天板を入れ、天板ごと250℃に予熱する。
- 水を40℃くらいに温め、植物油、イースト、砂糖、塩を加えて良く混ぜる。
- ライ麦粉、薄力粉、強力粉を少しずつ加えて混ぜる。最初は泡立てで、重くなったらヘラなどに変えて混ぜる。
- ボウルから台に空け、15分くらいしっかりと捏ねる。最初はベタベタしているが段々まとまってくる。
- きれいにしたボウルに生地を戻し、ラップなどでカバーをして、45分から1時間、倍の大きさまで発酵させる。
- 台に発酵した生地を空け、8等分する。1個65グラムくらいになります。
- 台に打ち粉をして1個を直径15cmくらいの円にのばす。引っ付きやすい生地なのでしっかり打ち粉をする。布をかぶせて30分寝かせる。
- 成形した生地にフォークで全体に穴をあけ、予熱した天板に手早く乗せて5分焼く。天板に入りきらない場合は数回に分けて焼く。
- 焼きあがったらラックに乗せて冷めるまで乾いた布をかぶせておく。
動画
ヒント
動画のようにバターとキュウリだけでもいいですし、お好みの具材でオープンサンドにしても美味しいです。ポーラブレッドのサイトを見ると様々なアイデアがあるので参考になさってはいかがでしょうか?
次にスウェーデンに行ったら絶対にポーラブレッドを買おうと誓いました。