スウェーデンのインゲルは、彼女が高齢になりリタイアした6、7年前までやり取りのあった取引先で、年に1、2回彼女の自宅兼仕事場に行くと、季節のスウェーデン料理を振舞ってくれるのが通例。ある年にはボウルいっぱいに作ったサーモンとゆで卵のゼリー寄せ(アスピック)を出してくれました。
英語が苦手なインゲルの通訳をしていた娘のマリアが「なぜか我が家では夏至の料理はこれなの」と説明してくれました。ゼリーごと大胆にすくって、この季節の名物の新じゃがとサラダと一緒に。暑い季節には食べやすく、さっぱりとのど越しが良く、美味しくて忘れられない料理となりました。
以来、夏至の季節が近づくと頭に浮かび、レシピを聞こうかなと思いつつ、英語が苦手なインゲルが返事するのにマリアが手助けするのかなと想像して何となく聞きづらく(マリアがいつも軽くイラっとしていたので)そしてインゲルがリタイヤしてから交流が途絶え、そのままになってしまっていました。
昨年、ふるさと納税で北海道から送られてきたサーモンがまだ残っていたので、いよいよ作ってみようかとネットで調べること数か月。どうも結果ははかばかしくない。スウェーデンではアスピックのことを「aladåb(アラドブ)」と呼び、フランス語の「à la daube」から来ていることは突き止めたのですが、肝心のレシピがほとんど出てこず、分かったのは1940年代からあり1980年代には流行ったものの、今では懐かし料理になっていること。なるほど、40年くらい前に流行ったというのは、インゲルの年齢を考えると合点がいきます。
そんなある日、手持ちの1976年発行の北欧料理の本(英語)をパラパラとめくっていたら『Fish in aspic』の名前でレシピが書かれていてびっくり。灯台下暗しとはこのことか。解説に「Fish in aspic is a common dish in Scandinavia(魚のアスピックは北欧では一般的な料理)」とあるのは、80年代に流行ったとの情報を裏付けます。そうかそうか。早速作ってみよう。そろそろ夏至祭だしね。
本のレシピはアスピック液の作り方だけで、具の分量が(なぜか)一切書かれていないので、ふるさと納税でもらったサーモンのサイズ(300g)に合わせて分量を計算しました。ニンジンやグリーンピースなどを入れれば見た目に華やかだろうと思ったのですが、インゲルに倣ってサーモンとゆで卵とディルだけにしました。
インゲルはボウルからすくって盛り付けていましたが、一応「映え」を狙ってモールドで固めました。見た目に美しいので、おもてなしの時や、持ち寄りパーティーにいかがでしょうか。
それでは、レシピをどうぞ。
北欧風サーモンアスピック
用意するもの
- 750~800cc入るパウンド型
材料
具材
- サーモン 300g (皮と骨なし) 刺身用が便利
- ゆで卵 2個
- ディル 適量
アスピック液
- 水 500cc
- コンソメ 1個
- 塩 大さじ½
- 酢 大さじ1 レモン汁でも可
- 粒胡椒 3粒
- ローリエ 1枚
- ディルの茎、パセリの茎などの香草、ハーブ、野菜くずなどあるものを適当量
- 白胡椒
- ゼラチンパウダー 15g
作り方
- サーモンを3cmくらいの大きさに切る。ゆで卵は4つに輪切りする。
- パウンド型の内側にラップを敷く。
- 鍋に分量の水、コンソメ、塩、酢、粒胡椒、ローリエ、香草や野菜くずを入れて火にかけ、沸騰したらグラグラさせながら10分煮る。
- 鍋から香草や野菜くずを取り出し、サーモンを入れて弱火で静かにフツフツと10分茹でる。決してグラグラさせないこと。サーモンを取り出してよけておく。
- ザルに布か厚手のキッチンペーパーをかぶせ、鍋の中身を濾す。水を足して500ccにする。鍋に戻して胡椒を入れ、味見をして味を調える。やや濃いめで、ほんのり酸味がある味にする。酸味が足りなければ酢かレモン汁を加える。
- ゼラチンパウダーを振り入れて、再度火にかけてかき混ぜ、ゼラチンが完全に溶けたら火を止める。沸騰させないこと。鍋ごと氷水につけ、かき混ぜながらとろりとするまで冷ます。
- とろりとしたら型に1cmくらいゼラチン液を入れる。その上に輪切りにした茹でたまごを見栄え良く並べ、ゼラチン液を少し上に流す。サーモンと小さく切ったディルを乗せ、ゼラチン液をかける。それを繰り返して最終的に全部の具とゼラチン液を型に入れる。
- 冷蔵庫で4時間以上冷やし固める。固まったら型から出して切り分ける。
- 茹でたジャガイモと生野菜を添えて、マヨネーズやお好きなドレッシングと一緒どうぞ。
動画
ヒント
今年のスウェーデンの夏至祭は6月26日。夏至祭の日でも、暑い夏のひんやりメニューとしてもお勧めです。目にも涼しい料理はいかがでしょうか?
スウェーデン系フィンランド人による『Laxaladåb』という歌がありました。歌詞が気になる。