『空飛ぶヤコブさん』は1970年代に航空会社に勤めていたオヴェ・ヤコブソン(Ove Jacobsson)さんが子供に食事を作る時に冷蔵庫にあったものを適当に混ぜてオーブンで焼いたのが始まりの料理です。
70年代には近所の人を集めたホームパーティーが流行っていました。ヤコブソンさんも自分のタウンハウス(一戸建てが壁を接して建っている集合住宅)の人たちとホームパーティーを楽しんでいて、その時に作った適当オーブン料理が評判になりました。彼の隣に住んでいた新聞社に勤めるAnders Tunbergがこのユニークな料理名を考案。クチコミで評判が広がり、1976年にスウェーデンのレシピ本『Allt om Mat』に掲載され、70年代のトレンドになったとか。
下にアップしている当時の写真を見ると、バナナは横切りですね。今はほとんどの場合輪切りなのは、食べやすいからかしら。
この料理が日本でにわかに注目を浴びたのは 2016年に「地球の歩き方」とマルハニチロ がコラボして作ったレトルトシリーズ「地球の歩き方 旅の食卓」に含まれていた時でした。名前の強烈さに加え、材料の想像もつかない組み合わせに 食べてみたいと関心を引いたようでした。
その材料は、市販のローストチキン、バナナ、ベーコン、チリソース、生クリーム、仕上げにローストピーナッツ。ローストチキンはクリスマスのイメージですが、スウェーデンでは1年中焼かれたものがスーパーで手に入ります。バナナは意外なことにスウェーデンはヨーロッパの中でも一人当たり消費量がトップクラス。スーパーでは山積みで売られ、道端に頻繁にバナナの皮が落ちています。
レシピに「チリソース」とあるので、辛味のあるものと思われる方もいますが、スウェーデンのチリソース(Chilisås)は、 スパイシーなケチャップといった程度でほとんど辛くありません。 バーベキューが大好きなスウェーデン人の定番ソースで、写真は宿泊した家の冷蔵庫に当然のようにあったものです。ハインツ製ですね。
と、まあ、材料を見ると本当にスウェーデンではキッチンにいつもある物を適当に組み合わせたのだなあと、作っているところが目に浮かぶようです。
適当に作った料理が、半世紀たった今でも自分の名前が付いて、スーパーでレンチンのレトルトが手に入る程人気のメニューなのだから、人生何が起こるか分からない。
それでは、作り方です。なおローストチキンの代わりに手に入りやすい鶏むね肉を使っています。またスウェーデンのチリソースの代わりにケチャップ+タバスコにしました。
空飛ぶヤコブさん
材料
- 鶏むね肉 250g
- ベーコン 70g
- バターピーナッツ 50㏄
- バナナ 半本
- ケチャップ 50cc
- タバスコ お好みの量
- 生クリーム 100cc
作り方
- 小さく切った鶏肉とベーコンを良く炒める。この時、塩胡椒しようかな、と思ったのですがソースの味がしっかりしているのでしませんでした。結果的には正解でしたが、そこら辺はお好みで…。
- オーブン用の耐熱容器に(1)を入れ、上にピーナッツと輪切りにしたバナナを散らす。
- 生クリームを泡立て、ケチャップを加え、お好みの辛さまでタバスコを入れる。
- (3)を具の上に広げる。
- 200度に予熱したオーブンで10~15分焼く。材料には全て火が通っているので、高温で焼き目が付く程度で大丈夫です。
- ご飯とサラダと一緒にどうぞ。
これはスウェーデンの手工芸学校サマースクールに参加した時、昼食に出てきた空飛ぶヤコブさん。ビュッフェ形式でモリモリ盛っているため分かりづらいですが、奥にある黄色いのがそれです。ここではご飯を敷いた上にソースをかけてドリアのように作っていました。
いいアイデアだなあと思ったのでホームパーティーで採用。これはレシピの倍量で作っています。多分想像よりも美味しいと思います。お試しください。
ヤコブさんの気持ちになりたいなら、チリソースを使うべし!ちなみにうちの近くだと、三軒茶屋の輸入食材店のみが扱っていました。